My Dialog

日々の生活の中で心に移りゆくよしなし事を、 そこはかとなく書きつくるマイダイアリー

一流のデザイナーの創作プロセスに触れて


六本木ミッドタウンで開催されていた、マル秘展に行ってきた.

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「インスピレーション(Inspiration)」


この展示会のテーマ。"天から与えられた名案"という意味らしい.


この展示会は、デザイナーはどのようにしてこのInspirationを得ているか、そのプロセスを
デッサンとプロトタイプから明らかにしよう、という試みだったと思う.

いきなりまとめとして、思ったことを書くと,

・デザイナーの活動は、ひとえにInspirationを受けるためにあり, 
・そのプロセスは極めて人間的で代えがたい作業である

 

ということを感じた.

あとに詳しく書くけど、デザイナーの全ての活動は、
ステークホルダーのあいだを仲介する役割としての対象のあるべき関係性(コンセプト)を考え(思考)

・それを具体的なカタチとして表現すること(製作)

 
この2つだけ。

 

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この2つの変数それぞれに置いて、考えらるベストな解(→カタチ)を生み出すために、言葉にし、デッサンを描き、プロトタイプを作り、ユーザー観察をする。その活動をすることで、ベストなアイディアへと繋がる”インスピレーション”が生まれる瞬間をただただ作りにいく。

 
アイディアは”新結合”というけど、組み合わせの量が半端じゃない。そこらへんのビジネスマンがお遊びで組み合わせている組み合わせの数とは桁が違う。量も質も違う。

 
過去の偉人が制作した、大量の良質なデザインと思想、そして制作にかける時間により、ベストなインスピレーションが生まれる。

 
なんというか、すごく人間的な活動で、活動の中に意味があって、とてもいいなと思った。

 

果たして、この一連のプロセスは、機械学習できるのだろうか

 

 以下、展示を観察する中で、心に留まった点をいくつか.

 

デッサン

 
とにかくデッサン.

デザイン思考にもあるように、デザインのアウトプットは1回で成立することは決してなく、何度も何度も作っては修正してを繰り返して、アウトプットが作られる。

 
そして、その試行錯誤が1番しやすいのがデッサン(紙と鉛筆)

 ここで試行錯誤した形跡が、デザインの対象物に問わず、どの作品にも見て取れる。

 

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なんというか、デッサンはもはや絵を描いているというより思考しているに近いんだろうな
あとは、紙とペンで書いているときが、1番インスピレーションが沸きやすい、とかもあるんだろうな

 


そういえば、畑違いだけど、自分のラボ(研究室)の教授も常に紙とペンを持ち歩いていて、また尊敬する安宅さんも常にメモを取れるように、紙とペンを用意していると言っていて、


知的生産をする人、コンセプトデザインをされる人は、みんな紙とペンを愛用するんだなと。自分もこだわろう。


だからこそ、美術科やデザイン科では、デッサンがあれほど大切にされるのか。なるほど。

 自分も試しに、デッサンをはじめてみよう.

 

 

プロトタイピング


そして、デッサンである程度インスピレーションが得られたら、なにかしら簡単に作れて、かつよりリアリティ(3次元性)を感じられる形で、プロトタイピングをする。

 
それは、3Dプリンタだったり、小さな建築物だったり。

この段階から、対象物だけではなく、ヒトがたくさん登場していて面白かった(以下に記述)

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コンセプト

 

デザインは、決して単なる美しさの話ではない. むしろ、美しさよりも大切なものがある.


どの作品も、頭の中にある、言葉になりきらない、イメージ、温度感、思想を、どうにかして目に見える”カタチ”に落とし込もうという葛藤が見て取れる

 

それをカタチにするために、デッサンを書いたり、言葉で要件を定義したり、プロトタイプを作ってみたり

 

展示されているデザイナーのメモの中にも、まずさきにコンセプトを言語化しようとする姿が見て取れた.

 

デザインの出発点はやっぱり頭の中にある具現化しきれないコンセプトなんだなと、そしてデザイン活動とは、その具現化できないコンセプトにさらに磨きをかけ、そしてカタチにするプロセスなんだなと. 本やインタビューでそのことは事前に学んだが、今回の展示会で心から実感することができた.

 

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燃え落ちる日本か、燃え上がる日本か

 

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プロテインとかで有名なブランド、

ザバスは、

 

Source of Atheletic Vitality and Adventious Spirits の略らしい. ブランドイメージを的確に表したロゴになっている.

 

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シンガポール空港のデザインと、デザインコンセプトのメモが記された紙(今回の1番のお気に入りかも)

 

なによりも先に、コンセプトが箇条書きで明確に書かれている. 

 

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高輪ゲートウェイ駅の初期デッサンと完成品.

初期デッサンの雑さがすごい. はじめに頭の中にあるイメージを描き起こしたら, このくらいの粒度と柔らかさになったのだろう.


ヒト


どのプロトタイプにも、ヒトが登場する。

デザインはすべてヒトと対象との関係であるから、ヒトが登場するのだろう。ヒトを描き、ヒトがいる風景を想像し、そこにあるべき対象の姿を再び想像する。その繰り返しの中に、あるべきカタチが見えてくるのか.

 
いっぽう、"環境"や"持続可能性"が問われる現代では、よりマクロな視点;社会や自然といった視点も、デザインに取り込んでいくことがマストになっていくのだろう.

 

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表現力 mind and hand

おそらくどのデザイナーの方も、デザインと、関連する分野に関する、とてつもなく深い思慮と、哲学がある. ただ重要なのは, それをカタチにして示す、職人としての技術も同時に兼ね備えているということ. mind and hand. もしデザイナーを名乗りたいのなら、この後者の技術の側面を決して忘れてはいけない.

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環境 

一気に話が変わるが、そしてものすごく現実的な話になるが.

今回の展示会のディレクターを勤められた田川さんもおっしゃっていたが、田川さんは環境と運のおかげで、これらのデザイナーの方に近づくことができ、デザインエンジニアとしての活動の幅も広がっていった.(もちろん大前提として努力と専門性がある)

 
知識と技術だけではなく、環境の力が偉業を成し遂げるためには大切というのは、どの分野でも同じなんだなと改めて感じた.


自分はどの分野に進みたいのか. そのために、どの環境に潜り込むのか. 1つ大きな仮説検証のスタート点だなと、つくずく感じた.


デザインプロセスだけでなく、自分の人生のあり方についても考えさせられる展示会だった. 人間一人ができることはちっぽけで、どれも時間がかかるから、選択をしないとなにもなし得ないな.



p.s. 

きちんと六本木駅を降りて、散策をしたのはいつぶりだろうか. 記憶では、カタリバの活動で森ビルのGSに行ったとき以来. ということは, 2年前?

六本木は, ブルジョアっぽい人がたくさんいて、街も彼らのために、まるで別空間に来たかのように(切り離されて)整備されていて、

これはこれで文化や個性があっていいな、でも自分は別にここでマンションに住んだり高級ワンちゃんと散歩したい人生を望んではいないなと、改めて感じた. 

でも、綺麗なお姉さんがたくさんいるのだけは羨ましかった.笑

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